古寺巡礼 - 唐招提寺 第三十二段 Toshodaiji




     わたしの大和『古寺巡礼』
     大和の古寺を訪ねあるく人はなにを期待して巡礼するのだろうか。
     ある人は物見遊山、ある人はかの寺院のかの仏像に手を合わせるため。またある人は、何か思うところがあって古寺巡礼
     を幾たびもくり返すのであろう。
     いわずとも日本全国いたる所に古寺はある。平安の都であった京都にも誰もが知る古寺が数え切れないほどに存在するし、
     一度や二度は行ったことがあることと思う。であっても、心に残る仏像、印象に残る建物はそうはないであろう。わたし
     には僅かしかない。むしろ庭園の美しさばかりが印象に残っている。

     いったい大和の古寺の魅力は何であろうか。
     仏像のお顔だちが違う、建物が違う、寺院に向かう通りの景色が違う。物さびた築地がある。重厚な造りの民家がある。
     屋根瓦の厚み・形・色合いが違う。田畑を見ても、うねる山並みを見てもどこか懐かしい感じがして胸をうたれる。
     それは電車から眺める景色であってもそうである。
     しかし、いつまでもそれが残っているわけでは無い。わたしが見聞きしているたかだか五六十年の間に、日本の景色が、
     建物が、科学が、(写真機が)、そして人々の精神までが大きく変化してしまった。便利で快適な生活、それは進歩には
     違いないが、何か大きなものを過去に置き忘れてきてはいないだろうか。
     次に予定している“シリーズ“でもそれを考えてみたい。
     
     大和は日本人にとって特別なところなのだと思う。「心のふるさ」とは言うけれど、実はもっと奥深いところに答えが
     あるのだろう。それが今のわたしには分らない。大和とは何か、日本人とは、それを探っていきたいと思っている。




                              境内松林

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       堀辰雄が寝そべって、講堂の片隅にころがっている仏頭みたいに「古代の日々を夢みていたくなる。」
       といったのはこの辺りだろうか。





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                             会津八一 歌碑
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おほてらの まろきはしらの つきかげを

          つちにふみつつ ものこそおもへ



鐘 楼

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はす池 小道の右手の植込みは西室跡




本 坊

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右手の塀が応量坊





応量坊

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本坊前の小道

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本坊築地

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食堂跡

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                            東門より見る境内

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      道から右へ折れて、川とも呼びにくいくらいな秋篠川の、小さい危うい橋の手前で俥を下りた。
      樹立ちの間の細道の砂の踏み心地が、何とはなくさわやかな気分を誘い出す。
      道の右手には破れかかった築泥(ついじ)があった。なかをのぞくと、何かの堂跡でもあるらしく、
      ただ八重むぐらが繁っている。
      もはや夕暮れを思わせる日の光が樹立ちのトンネルの向こうから斜めに射し込んで来る。
      その明るい所に唐招提寺があった。
      『古寺巡礼』より。 和辻哲郎著




九月(ながつき)廿日のころ、ある人に誘はれ奉りて、明くるまで月見ありく事侍りしに、

おぼしいづる所ありて、案内せさせて入り給ひぬ。

荒れたる庭の露しげきに、わざとならぬ匂ひ、しめやかにうち薫りて、しのびたるけはひ、いとものあはれなり。

       
      :九月二十日のころ、ある人にお誘いをいただいて、夜明けまで月見をして歩いたことがあった。
       その方は、ふと思い出された所に立ち寄って、取り次ぎを請わせてお入りになった。
       荒れた庭に露がいっぱいおりていたが、そのあたりに、わざわざたいたものとは思われぬ香りの匂いがしっとりと薫っており、
       世を避けて静かに住む様子が、実に趣深かった。
        『徒然草』第三十二段より





 







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by kame-fukusima | 2017-07-31 08:01 | 古寺巡礼