洛中洛外点描 檸檬(れもん)




酸っぱい檸檬


f0374885_15430029.jpg




f0374885_17081303.jpg


桜の花が咲くころ、決まってある小説家の名を思い出す。
と書き出せば、ピンとくる方は若いころ文学好きの方であろう。

その名は、梶井基次郎。『檸檬』(れもん)という題の小説で知られている。
ほかには『櫻の樹の下には』という小説があった。
旧制三高の学生であった梶井は文学青年、「小説家は結核を患わなければ
ならない」という観念に取憑かれていたようである。ある日吐血し、望みが
適い喜んだという嘘のような逸話がある。そしてとうとう結核がもとで亡く
なってしまった。

いつの頃であったか、梶井が住んでいた下宿屋のあった辺りから寺町通りに
出て、通りを南に下がり二条の交差点南東角にある“八百卯”という果物店に
行ったことがある。
二階のフルーツパーラーに入りフルーツパフェを注文し、店の主人にこの店は
梶井があの檸檬を買った店かと尋ねた。大柄の店の主は、すかさず「そうです」
とにこやかに返事をした。「ほんまに?」と疑うと、小説が書かれた当時、この
辺ではこの店しか果物店はなく、当時珍しかった檸檬を売っていたとのこと。
そんな話をしながらパフェを食べた。

他愛もない話に付き合ってくれた店の主はすでに居ない。店が閉ってから大分
経つが後継者はいなかったのか、再び店の開くことはなかった。主不在の建物は
心なし寂しげに見えるのは、私の思い込みか。
撮影年:2018(旧八百卯)




[PR]
by kame-fukusima | 2018-01-30 06:30 | 洛中洛外